アプリケーションと技術

Nikon BioImaging Labがサポートする幅広いサービス(イメージング、解析、およびその他のツール)の概要をご紹介します。クリックして特定の項目にジャンプするか、下にスクロールしてご覧ください。


ハイコンテントイメージング(HCI)とハイコンテントアナリシス(HCA)

技術: 共焦点レーザー顕微鏡システム 、倒立顕微鏡ECLIPSE Ti2-ENIS-ElementsソフトウェアディープラーニングソフトウェアNIS.ai

ハイコンテントイメージング(HCI)は、より多くの検出チャネルで、より多くのタイムポイントで、より多くのデータを撮影することです。創薬の表現型スクリーニングを例とするように、HCIとハイコンテントアナリシス(HCA)が、多くの研究・開発にとって強力なツールであることは広く受け入れられています。しかし、HCIの最大の強みである「豊富なデータを大量に得られること」は、一方で最大の欠点にもなります。実験デザイン、データストレージ、画像分析などに深刻なボトルネックを生じる懸念があります。Nikon BioImaging LabのHCIサービスでは、一般的なプロセスのボトルネックを解消するために、自動化に向いた柔軟なプラットフォームを使用します。

HCIは細胞の培養状態のモニタリングや毒性評価など、さまざまな用途に適用できます。スフェロイド、オルガノイド、組織、MPS/Organ-on-a-chip(OoC)などの厚みのあるサンプルをイメージングするためには、サンプルの深部でデータを取得するための共鳴走査共焦点システムを使用します。また、NIS.aiディープラーニングソフトウェアモジュールで、セグメンテーションなどの多彩な分析タスクをAIで実行することができ、自動化されたイメージングや解析パイプラインに組み込むことができます。


3Dイメージング

技術:共焦点レーザー顕微鏡システム倒立顕微鏡ECLIPSE Ti2-E

細胞生物学などの分野は、平面上の単層培養細胞のin vitroイメージングを活用してきました。しかし、2Dのモデルシステムの限界が徐々に認識されるようになり、スフェロイド、オルガノイド、MPS/Organ-on-a-chip(OoC)などの、より生体を反映したモデルが選択されるようになっています。3Dシステムは生物学的により良いモデルを提供しますが、相当な厚みと3D構造を持つため、これまでの2Dイメージングのアプローチでは限界があります。

ニコンの共焦点レーザー顕微鏡システムは、サンプルの数十マイクロメートル以上の深部でのイメージングが可能な、ポイントスキャン共焦点システムです。また、倒立顕微鏡ECLIPSE Ti2-Eは、3D蛍光イメージングにも対応し、デコンボリューションソフトウェアにより約20マイクロメートルの厚さに対応する光学セクショニングを実現します。広視野デコンボリューションによる3Dイメージングは、共焦点顕微鏡のように瞬間的に3Dセクショニングを得られる訳ではありませんが、高速かつしばしば、弱いシグナルのサンプルを撮影することに適していますNikon BioImaging Labでは、3Dイメージング技術における微妙な違いや適切な選択肢についてご説明することができ、お客様の成功に貢献します。

共焦点レーザー顕微鏡システムA1R HD25で取得した腎臓オルガノイドのZスタック画像。

赤:アクチン細胞骨格(F-アクチン)
青:核(DNA)


蛍光イメージング

技術:共焦点レーザー顕微鏡システムA1R HD25、倒立顕微鏡ECLIPSE Ti2-E

蛍光顕微鏡観察は、特定のターゲット分子を高い特異性で検出できる最も高感度なイメージング方法の1つであると広く考えられています。固定サンプルは免疫組織化学法や免疫蛍光染色法で標識されます。生体サンプルは、蛍光タンパク質を目的タンパク質に融合して発現させたり、膜透過性色素で染色して観察します。

蛍光は、多くの重要なイメージング方法を支えており、スペクトル的に異なる蛍光色素分子で様々なターゲットを標識することにより、多色イメージングが可能になります。蛍光イメージングができるように設計された顕微鏡を用いる場合でも、実験を成功させるためには考慮しなければならない多くのポイントがあります。Nikon BioImaging Labは、光毒性や蛍光色素の選択を含むサンプル調製など、実験の成功を左右する重要なポイントについてアドバイスできます。

A1R HD25はレーザー照明を搭載し、倒立顕微鏡Ti2-EはLED照明を搭載しています。特にECLIPSE Ti2-Eは、高度な多重実験を可能にする高速カラー切り換え7チャネルLED光エンジンLumencor Spectra-Xを搭載しています。A1R HD25は、CFP/YFPのFRET研究で一般的に使用される445 nmと514 nmのレーザーを含む6本のカラーレーザーを搭載しています。他にも、ターゲットを絞ったFRAPや光刺激実験が実施可能です。 Nikon BioImaging Labは、蛍光色素分子、顕微鏡の設定、封入剤などについての専門知識や経験を活かし、蛍光ベースのアッセイを成功させるお手伝いをします。

マウス海馬神経細胞、 緑:GFP(樹状突起)、赤:PSD-95-TagRFP(シナプス後マーカー)
対物レンズ: CFI SR HP アポクロマート TIRF 100XC Oil
画像ご協力:東京大学大学院 医学系研究科 神経細胞生物学分野、柏木有太郎先生、岡部繁男先生


高解像度イメージング

技術:共焦点レーザー顕微鏡システム倒立顕微鏡ECLIPSE Ti2-E

高品質の高解像度画像を取得するには、倍率が高い顕微鏡を使用するだけでは不十分です。ニコンの共焦点レーザー顕微鏡システムは、光学セクショニングだけでなく、その2D切片のサンプル特徴を高解像度でイメージングすることが可能です。共焦点システムの解像度を最大限に向上するために、Nikon BioImaging Lab ではA1-ER HD25データを提供しています。これには、高い評価を得ているニコンの対物レンズの詳細な点像分布関数(PSF)モデルが含まれます。

倒立顕微鏡ECLIPSE Ti2-Eは、高解像度の多次元イメージングに対応し、共焦点システムと同様に、3Dやタイムラプス、多色などのデータを取得できます。また、解像度や光学セクショニングを向上できるデコンボリューションソフトウェアを搭載しています。
高解像度の画像を得るために必要なのは顕微鏡の準備だけではありません。同様に重要なのは、適切なサンプルの準備です。たとえば、サンプルが適切でない屈折率の媒体にマウントされている場合、特にZ方向の光学分解能が大幅に低下します。Nikon BioImaging Labでは、高解像度の顕微鏡の調整とサンプル作製の両方の専門知識により、これらの両面をカバーしています。

蝸牛繊毛のXYおよびXZ画像。解像度拡張モジュールA1-ERによるデコンボリューション前(左)と後(右)。1エアリーユニットのピンホール径を持つA1Rを用いて画像を取得。


カラーイメージング

技術: 倒立顕微鏡ECLIPSE Ti2-E

ニコンの倒立顕微鏡ECLIPSE Ti2-Eは、倒立顕微鏡には、透過光照明用光源LumencorLIDAを搭載しています。LIDAは、連続トリガーが可能な赤、緑、青の各LEDで構成され、各色を順番にイメージングし、3つの画像を組み合わせてRGBカラー画像に合成できます。

これは、モノクロカメラよりも感度や空間解像度、ダイナミックレンジの低い単露光カラーカメラを使用せずにすむという利点があります。さらに、LEDの各色の輝度を個別に設定可能なため、画像の後処理やシステム部品の稼働を行うことなく、ハードウェアからカラーバランスを非常に細かく制御できます。

この技術は、病理学者や組織学者だけでなく、定量的カラーイメージングの最新アプローチをお求めになるどなたにとっても有益です。LIDAはスペクトルにUVや近赤外光を含まないため、生細胞イメージングにも適しています。Nikon BioImaging Labがサポートできる技術の中で、カラーイメージングが有効なものには、明視野のほか、偏光、微分干渉(DIC)、暗視野観察があります。Nikon BioImaging Labでは、カラーイメージングをはじめとする顕微鏡イメージングや解析ワークフロー全体に対する、最良の方法についてもアドバイスさせていただきます。

HE染色した哺乳類の骨格筋組織切片の明視野カラー画像。CFI プランアポクロマート Lambda 10X対物レンズで取得。


ラベルフリー(非染色)イメージング

技術:BioStudio-T倒立顕微鏡ECLIPSE Ti2-ENIS.ai

蛍光イメージングは、対象を強調して観察する最も一般的な技術の1つですが、最も侵襲的な手法の1つでもあります。蛍光色素分子は光退色しやすいことで有効寿命が限られるため、繰り返しの観察で同量の発光を励起するためには、より強い照明での励起が必要となります。

生細胞の場合、高強度の照明に対する光毒性反応によって、実験はより難しくなります。幹細胞などのセンシティブな細胞では、目的のターゲットの蛍光イメージングが思うようにできない場合があります。

細胞のダメージに対する懸念から、ラベルフリー(非染色)イメージング技術が、再び注目されています。非染色イメージングにより、高輝度照明の必要性と、標識によるアーティファクトの両方を回避できます。

人工知能をベースとした機械学習や深層学習による解析技術も、このトレンドを可能にしています。たとえば、Convert.aiモジュール(NIS.ai深層学習ソフトウェアモジュールの1つ)は、この画像の疑似DAPI染色のように、主要な細胞の特徴を非染色画像から自動的に識別することができます。Nikon BioImaging Labでは、定量位相、位相差、微分干渉(DIC)、暗視野、明視野などの技術を使用して、ラベルフリー(非染色)のイメージングをサポートしています。お客様の観察対象に対して、ラベルフリーイメージングが効果的かどうかをご確認いただくために、お気軽にお問い合わせください。

Convert.ai適用画像
オリジナル画像

核のDAPI染色は細胞のカウントやセグメントの一般的な方法ですが、Convert.aiは、DIC画像や位相差画像において、DAPI標識の場所を予測するよう学習できます。予測した観察像を使用してセグメントやカウントが行えるため、DAPI染色や蛍光撮影を行う必要がありません。

画像ご協力:北海道大学電子科学研究所技術部 小林健太郎先生


細胞スクリーニング

技術:BioPipeline LIVE、共焦点レーザー顕微鏡システムA1R HD25、BioStation CTBioStudio-T

幹細胞は、再生医療や関連分野に不可欠なツールですが、環境に敏感なため、未分化状態での培養や維持が難しいことが知られています。Nikon BioImaging Labでは幹細胞(およびその他の困難な細胞タイプ)の培養課題に対処するために、BioStudio-Tを使用しています。

BioStudio-Tは、敏感な細胞培養を長期間モニタリングするために一から開発された、インキュベーター内に収まる、単一容器のためのコンパクトな顕微鏡イメージングシステムです。サンプルを静止状態に保ったまま、対物レンズが対象をスキャンすることで、細胞への影響を低減できます。

位相差画像による非染色解析

赤:未分化細胞
緑:分化細胞