モデル生物/組織全体のイメージング

モデル生物や器官、組織の深部イメージングでは、照明や検出光の散乱に気をつける必要があります。ニコンでは、観察対象に適した装置や対物レンズの提供を通して、これらの深部イメージングを可能にします。

モデル生物/組織全体のイメージングに関連する製品

ゼブラフィッシュ胚

20X LWD 1.0 NA WD 2.8mm
画像ご協力:Erika Dreikorn and Dr. Beth Roman, Department of Human Genetics, University of Pittsburgh Graduate School of Public Health

深部イメージングに対応するニコンの主要なソリューションは、高速多光子共焦点レーザー顕微鏡システムAX R MPです。1300 nmまでの励起波長をサポートし、サンプルの深さ1.4mmまでのイメージングが可能です。同時に2ラインのレーザー波長でスキャンできるため、マルチカラー多光子画像を高速で取得できます。

数百µmまでの深部イメージングには、共焦点レーザー顕微鏡システムAX/AXRが適しています。シングルピンホールによる共焦点検出は、ピンホールアレイを利用する共焦点顕微鏡と比べて、焦点の合っていない光を大きく除去できるため、光学セクショニングを向上させ、クリアな画像を取得することが可能です。

スピニングディスク共焦点システムは、カメラを検出器としたシステムのため、高速で画像が取得できます。また、マルチピンホールでの検出により、光毒性を抑えたイメージングが可能です。

●:使用可能 , ⚬:オプション

高速多光子共焦点レーザー顕微鏡システムAX R MP 共焦点レーザー顕微鏡システムAX/AX R
視野数 対角22mm(正方形) 対角25mm(正方形)
相対的最大観察深度 〜1.4 mm(1300 nm励起の場合) ~ 100 – 500 μm
ビデオレートでの撮影 可能(30 fps:512 x 512画素) 可能(30 fps:512 x 512画素:AX Rのみ)
ディテクターの種類 GaAsP NDD(近接ディテクター:落射および透過)。最大4チャンネル。 GaAsP PMTとマルチアルカリPMTが利用可能。最大4チャンネル。
使用可能な顕微鏡 AX R MP AX / AX R
倒立顕微鏡 ECLIPSE Ti2-E yes yes
正立顕微鏡ECLIPSE Ni-E no yes
正立顕微鏡FN1 no yes
多光子共焦点レーザー顕微鏡システム専用顕微鏡 AX-FNGP(門型支柱型) yes no
多光子共焦点レーザー顕微鏡システム専用顕微鏡 AX-FNSP(単支柱型) yes no

モデル生物/組織全体のイメージングについて

組織透明化

CUBIC法で透明化したニワトリ胚の脳幹聴覚神経回路(E17)
染色法:Tetbow(テトラサイクリントランス活性化因子Brainbow)
対物レンズ:CFIプランアポクロマート10XC Glyc
名古屋大学大学院医学系研究科細胞生理学分野、江川遼先生、久場博司先生

組織透明化に使用可能な対物レンズ

CFI アポクロマート Lambda Sシリーズ生体組織の透明度を上げることの可能な、光学的透明化技術の開発が進んだことにより、これまでよりも大きく複雑なサンプルの観察が可能になりました。また、Expansion Microscopyでは、サンプルのサイズが物理的に4〜10倍以上大きくなり、深部イメージングに適した顕微鏡の需要がますます高まっています。

顕微鏡で厚みのあるサンプルを観察する場合、サンプルと浸液の屈折率の差を最小限に抑え、球面収差をできる限り低減することが重要です。球面収差は画質を低下させ、作動距離にも影響を及ぼします。ニコンでは、さまざまな透明化溶液に直接使用可能な、透明化標本観察用の対物レンズを提供しています。これらの対物レンズは、屈折率(RI)の補正環を備え、長い作動距離、高い開口数にも対応しています。

ニコンは他にも、シリコーン浸対物レンズシリーズや、CFI75ウォーターディッピング対物レンズシリーズ、水浸対物レンズを含むLambda S対物レンズシリーズを取り揃えています。一般的に、シリコーンオイルや水、グリセリンなどの浸液は、屈折率が油浸オイルよりも小さく空気より大きいため、組織透明化試薬に適合します。

麻酔下のYFP-Hマウス(4週齢)をオープンスカル法でin vivoイメージング。第V層の錐体ニューロン全体と深部の海馬ニューロンを可視化。最大1.4mmの深部の海馬樹状突起の3次元イメージングを実現した。
1300nm対応のGaAsP NDD EPIディテクターユニットおよびCFI75 アポクロマート25XC W 1300対物レンズ(NA 1.10、WD 2.0 mm)を使用して画像取得、励起波長:1040 nm
撮影ご協力:北海道大学電子科学研究所、川上良介先生、日比輝正先生、根本知己先

深部イメージングのための照明

通常の共焦点顕微鏡観察においても、より深いイメージングを可能にする方法があります。その一つは、より長波長にシフトした励起スペクトルおよび蛍光スペクトルを持つプローブを使用することです。波長の長い光は散乱が少ないため、深部イメージングに適しています。

長波長の照明を使用するメリットは、多光子励起用のレーザーと組み合わせることでさらに高まります。多光子励起とは、2個以上の光子が一度に1つの蛍光色素分子に吸収される現象です。この現象は自然界にはまず存在しません。

多光子励起を実現するための高出力フェムト秒パルスレーザーは、対物レンズから照射され、焦点付近の蛍光色素のみを励起できるため、ピンホールが不要になります。ピンホールは光学セクショニングを改善することができますが、蛍光シグナルを最大限に検出することが望ましい深部観察においては、多光子励起での観察が最適です。

用語解説

ディテクターの種類
ポイントスキャン型の多光子および共焦点顕微鏡は、一般的に、光電子増倍管(PMT)などの単一要素のディテクターを利用しますが、スピニングディスク共焦点顕微鏡および落射蛍光装置はデジタルカメラを利用します。
ビデオレートでの撮影
ビデオレートは、通常、約30フレーム/秒(fps)と定義されていますが、 最適なイメージングレートは観察目的により異なります。一般的にEM-CCDカメラは最大60 fps(フルフレーム)で、sCMOSカメラは最大40〜100 fps(フルフレーム)で撮影可能です。
使用可能な顕微鏡
それぞれのシステムを搭載可能な顕微鏡です。
相対的最大観察深度
十分な解像度とS/N比で画像取得できる、おおよその観察深度範囲(Z軸)を指します。この値は、サンプルや容器の光学特性や蛍光標識などにより大きく変動します。
視野数
対物レンズ倍率1倍における観察範囲の直径です。