アプリケーションノート

共焦点と薄片作製技術が明らかにした、琥珀に閉じ込められた化石ゴキブリの生態

2022年2月

昆虫の感覚器官は、外界の情報を探知する極めて重要な役割を担っている。これらは小さいサイズや少ない神経細胞数により強い制約を受けている一方で、脊椎動物にも劣らない非常に優れた情報処理能力を有しており、全動物種の70%を占める昆虫の大繁栄を支えてきた核心的要因のひとつと考えられている。そのため、昆虫を対象とした進化古生物学的研究において、感覚器官を調査することは重要である。
北海道大学大学院理学院の谷口諒氏、伊庭靖弘准教授、同大学電子科学研究所の西野浩史助教、同大学総合博物館の山本周平博士、福岡大学理学部地球圏科学科の渡邉英博助教は、ゴキブリの仲間であるHuablattula huiのオスの琥珀化石において、琥珀基質をギリギリまで除去しつつ且つ感覚器官が埋没した状態のプレパラートを作製した。これを共焦点レーザー顕微鏡システムで撮影することにより、微小な感覚器官の解析が、化石昆虫の詳細な生活様式の復元に極めて有効であることを示した。本アプリケーションノートでは、その研究成果における共焦点レーザー顕微鏡システムの寄与について紹介する。