スライド標本のイメージング

カバーガラスや、スライドガラスにマウントした標本の観察は、光学顕微鏡の一般的な用途の1つです。生体サンプルの観察では、マルチウェルプレートやディッシュなどの容器が一般的に使用されますが、固定されたサンプルのイメージングには、プレパラートでの観察が最も一般的で、長期保存も容易です。観察対象の屈折率に適した封入剤を使用すれば、収差を最小限に抑えつつ、最大限の高解像度で簡単にイメージングが行えます。

スライド標本のイメージングに関連する製品

電動正立顕微鏡Ni-Eは、スライド全域を自動でイメージングすることが可能な、研究用電動正立顕微鏡システムです。この顕微鏡は、ニコン独自の階層構造を採用し、蛍光フィルターキューブタレットと電動吸収フィルターホイールを2階層に搭載可能です。また、対物レンズごとにコンデンサー、視野絞り、開口絞り、NDフィルターなどの設定を割り当てることができ、操作の効率化につながります。

自動スライド顕微鏡イメージングシステムBioPipeline SLIDEは、正立顕微鏡Ni-Eと組み合わせることで、固定サンプルのスライドスキャン/ホールスライドイメージングなどのアプリケーションに対応します。Marzhauser 社の自動スライドローダーSlide Express2を搭載しており、最大120枚のスライドの収納と、自動交換が行えます。標準的な顕微鏡プレパラートを用いた、ハイスループットイメージング、ハイコンテントイメージングを実現します。

正立顕微鏡Ciシリーズは、臨床や病理学*でのプレパラート観察を対象としており、臨床検査施設における日常的な検査にご使用いただけます。フライアイレンズを採用しているため、視野全体にわたって均一な照明が得られます。正立顕微鏡Siは、高い光学性能と使いやすさを両立し、臨床検査施設だけでなく学生実習においても、効率の高い操作が可能です。

落射蛍光イメージングのための光源である蛍光LED照明システムD-LEDIは、4つのLEDモジュールで385 nm、475 nm、550 nm、621 nmの励起波長をカバーしています。4つのLEDはそれぞれ独立して、ソフトウェアまたはハードウェアからトリガー制御することが可能です。D-LEDIは高輝度で振動がなく、アライメントフリー、メンテナンスフリーであることが特長です。また、Siを除いて、Ni/Ciシリーズは、サードパーティ製品の光源も使用できます。

●:使用可能 , ⚬:オプション

電動正立顕微鏡ECLIPSE Ni-E 正立顕微鏡ECLIPSE Ni-U 正立顕微鏡ECLIPSE Ci シリーズ 正立顕微鏡ECLIPSE Si 自動スライド顕微鏡イメージングシステムBioPipeline SLIDE
透過光源 LEDまたはハロゲン LEDまたはハロゲン LED(Ci-E、Ci-L-Plus) ハロゲン(Ci-S) LED LEDまたはハロゲン
電動制御 yes 一部電動対応 一部電動対応(Ci-Eのみ) no yes
視野数 25 mm*1*3
22 mm*2
25 mm*4
22 mm*2
25 mm*5
22 mm*2
22 mm 25 mm
落射蛍光光源 蛍光LED照明システムD-LEDI(4波長対応LED光源)
サードパーティ製品の光源も利用可能
蛍光LED照明システムD-LEDI(4波長対応LED光源)
サードパーティ製品の光源も利用可能
蛍光LED照明システムD-LEDI(4波長対応LED光源)
サードパーティ製品の光源も利用可能
内蔵白色光LED(明視野観察用と共通) 蛍光LED照明システムD-LEDI(4波長対応LED光源)
サードパーティ製品の光源も利用可能
共焦点/多光子共焦点システム ECLIPSE Ni-E ECLIPSE Ni-U ECLIPSE シリーズ ECLIPSE Si BioPipeline SLIDE
ポイントスキャン共焦点レーザー顕微鏡システムAX/AX R yes no no no no
ポイントスキャン高速多光子共焦点レーザー顕微鏡システムAX R MP yes no no no no
スピニングディスク共焦点スキャナユニット yes yes no no no
観察方法 ECLIPSE Ni-E ECLIPSE Ni-U ECLIPSE Ci シリーズ ECLIPSE Si BioPipeline SLIDE

明視野

yes yes yes yes yes
共焦点(ポイントスキャン) yes no no no no
共焦点(スピニングディスク) yes yes no no no
暗視野 yes yes yes yes yes
微分干渉(DIC) yes yes no no yes
多光子 yes yes no no no
位相差 yes yes yes yes yes
簡易偏光 yes yes yes yes yes
透過蛍光 no no no yes no
落射蛍光 yes yes yes no yes

*1 電動傾角四眼鏡筒NI-TT-E、傾角四眼鏡筒NI-TT、三眼鏡筒T C-TT、三眼鏡筒F C-TFを装着時
*2 エルゴ鏡筒C-TE2、双眼鏡筒C-TBを装着時
*3 AX / AX R共焦点システムを装着時
*4 傾角四眼鏡筒NI-TT、三眼鏡筒T C-TT、三眼鏡筒F C-TFを装着時
*5 三眼鏡筒T C-TT、三眼鏡筒F C-TFを装着時

スライド標本のイメージングについて

イメージングに適した対物レンズ

適切な対物レンズの選択は、ライブセルイメージングと同様に、固定スライドの観察においても重要です。固定スライドの大きな利点の1つに、封入剤の選択肢が多いことがあります。組成や屈折率(RI)が多岐に渡るため、イメージング条件を細かく調整できます。これにより、球面収差を抑え、高解像度での深部観察が行えます。一般的に、近年の封入剤には、蛍光標識した標本の長時間観察に対応するため、退色防止剤が含まれています。

ニコンは、一般的な封入剤に適した屈折率のイマージョンオイルで使用可能な、対物レンズを各種用意しています。CFI プランアポクロマート Lambda D シリーズ対物レンズには、CFI プランアポクロマート Lambda D 100X油浸対物レンズ(NA = 1.45)など、スライド標本の観察に適した各種のドライ対物レンズや油浸対物レンズがあります。高解像度を必要とする実験には、CFI アポクロマートTIRFシリーズの対物レンズが適しています。60Xと100Xの油浸TIRF対物レンズは、いずれも1.49のNAを実現しています。

スライド標本イメージングに適した観察方法

適切な観察方法は、アプリケーションごとに異なります。ヘマトキシリン・エオジン(HE)染色された病理サンプルを観察する場合は、ほぼ必ず明視野顕微鏡が使用されます。臨床研究では、蛍光イメージングも多く使用されます。落射蛍光イメージングにデコンボリューションやぼけ光除去機能を組み合わせることにより、多くの場合で20 µm程度までの厚さのサンプルの特性評価が可能となります。ただし、さらに厚みのあるサンプルの場合は、共焦点や多光子など、より強力な光学セクショニング技術が必要となることがあります。

透明な固定細胞の観察には、明視野よりもコントラストが高く、特定の標識も必要としない、位相差や微分干渉(DIC)などの観察方法が一般的に使用されます。微分干渉観察は、光学セクショニング効果があり、こうした観察方法としては最高の解像度を実現します。位相差観察は、コストが低く、容易に実施できる利点があります。

HE染色したマウス胚腸組織切片の明視野画像 (対物レンズ:CFI Plan Apochromat Lambda D 20X)

乳がん、FISH法(対物レンズ:CFI Plan Apochromat Lambda D 100X Oil)
作例ご提供:聖マリアンナ医科大学

広節裂頭条虫卵、無染色(対物レンズ:CFI アクロマート DL 10X、カメラ:Digital Sight 1000)

各アプリケーションに適したカメラ

適切なカメラや検出器の選択は、観察方法によって変わります。HEなどの染色で標識した明視野画像は、通常、カラーカメラを用いて取得します。一方、蛍光シグナルは微弱であることが多く、一般的に、感度のより高いモノクロカメラを使用して取得します。ポイントスキャン共焦点や多光子共焦点のシステムでは、PMT(光電子増倍管)などの専用の検出器を使用します。

カラーかモノクロかという選択肢以外にも、さまざまな種類のカメラから選択できます。CCDカメラは、かつて市場を席捲し、今でも多くのアプリケーションに適しています。しかし、現在の市場では、画素数がより多く取得速度の速い、広視野イメージングをサポートするCMOSカメラが一般的となっています。

ニコンの最新のDigital Sight(DS)シリーズカメラは、CMOS技術を利用しています。カラーCMOSカメラDS-Fi3は、高い色再現性を必要とするカラー画像の取得に適しています。カラーCMOSカメラDigital Sight 1000は、コストパフォーマンスに優れた顕微鏡用のカメラです。ビデオレート(30枚/秒)でのフルHD(1920 x 1080画素)撮影に対応し、高い色再現アルゴリズムを採用しています。 Digital Sight 10は、カラーCMOSイメージセンサーを搭載し、最大25 mmの広視野(FOV)を実現します。蛍光イメージングに最適なモノクロCMOSカメラDS-Qi2も25 mmの広視野をサポートしています。

インドキョン鹿の皮膚の線維芽細胞の蛍光画像。Alexa Fluor™488ファロイジンで標識し、モノクロCMOSカメラDS-Qi2で画像取得。

胃、 SMA染色(対物レンズ:CFI プランアポクロマート 40XC、カメラ:Digital Sight 10)17×12枚のタイリング画像

作例ご提供:株式会社ニチレイバイオサイエンス

画像ご協力:東京女子医科大学写真室 村岡和宏主任

用語解説

共焦点/多光子共焦点システム
共焦点観察や多光子観察では、ボケ像を取り除いた光学セクショニングイメージングが可能です。共焦点の場合は最大数百µm、多光子の場合は最大1 mmの厚みのサンプルから、セクショニング画像を取得することができます。
視野数
対物レンズ倍率1倍における観察範囲の直径です。
観察方法
光学顕微鏡は、一般的に位相差やDICなどの透過光観察が可能なほか、落射蛍光や共焦点などの蛍光観察も選択できます。
透過光源
透過光観察の光源は、主にLEDまたはハロゲンランプです。LEDは明るく環境に優しいうえ、高いエネルギー効率を有します。
電動制御
XYZステージ、蛍光フィルターキューブタレット、対物レンズレボルバーなどを電動化制御します。
落射蛍光光源
落射蛍光顕微鏡は一般的にLED光源を採用しています。LEDはエネルギーの消耗が少なく、頻繁なランプ交換も不要なため、水銀ランプやメタルハライドランプに置き換わっています。