構造化照明顕微鏡法(Structured Illumination Microscopy)の原理

ストライプ状照明から生まれるモアレ縞を読み取り、画像処理で構造を復元

ある特定の濃淡パターンで照明することを「構造化照明」といい、標本の微細構造の上にストライプ状の照明パターンを重ねると、モアレには回折限界を超える細かい標本の情報も変調されて含まれているため、モアレを撮像して、画像演算によって元の構造を復元することで、顕微鏡の分解能を超えた細かい構造もイメージング可能になります。これが、構造化照明顕微鏡法です。

既知の高空間周波数のパターン照明を照射することによって、微細構造の超解像情報が「モアレ縞」として取得できる。


複数画像からの超解像画像構築

構造化照明で得られたモアレ画像には、サンプル内の微細構造の情報が含まれています。
構造化照明された1枚の取得画像では情報が不足するため、位相と方向を変えて複数枚の画像を取得したのち、得られたモアレ縞から画像演算により微細構造を抽出して、従来の2倍の解像度の超解像画像を構築します。

構造化照明の位相を複数回シフトさせて画像データを取得

さらに、これを 3 方向行い、独自のアルゴリズムで 処理することで 2 次元の超解像情報を取得


高周波ストライプ状照明を利用して、2倍に解像力を向上

顕微鏡の解像力を上げるには、広がり角の大きな回折光を顕微鏡に取り込む必要がありますが、実際に取り込める角度は対物レンズのNAで制限されるため、対物レンズのNAよりも大きな広がり角を持つ、標本の微細構造からの回折光を取り込むことは不可能でした。(図A)

ところが、標本に構造化照明を施すと、対物レンズのNAよりも大きな広がり角をもつ標本からの回折光を対物レンズで取り込める角度に変換することができます(図B)。そのときに生じるモアレパターンを利用することにより、あたかもNAが2倍になったかのような解像力が得られます(図C)。

図A:NAで解像力が制限される

図B:構造化照明により、大きな角度の光束を回折させ、NAで取り込める角度に変換

図C:あたかも2倍のNAを持つ対物レンズで取得したかのような画像を取得