顕微鏡の種類

顕微鏡を分類すると、生物顕微鏡、工業用顕微鏡、実体顕微鏡に分けることができます。また、生物顕微鏡と工業用顕微鏡には、対物レンズが標本の上に位置する正立型と対物レンズが標本の下に位置する倒立型があります。

(左)正立型、(右)倒立型

生物顕微鏡

染色されたもの、あるいは染色されていない透明な生物標本を観察する顕微鏡です。 正立型は、生物、医学関連のプレパラート標本*の観察に利用されています。また、倒立型は、シャーレなど、培養容器内の細胞や組織の観察に利用されています。

*プレパラート標本は、標本を数μm~数十μmの切片に処理し、変化を避けるために、スライドガラスとカバーガラスとで挟み、封止したものです。

(左)正立型、(右)倒立型

工業用顕微鏡

文字通り、工業用途(半導体ウェハ検査、液晶基板検査)や金属標本の観察に利用されています。倒立型は正立型に比べ、標本を交換する度にステージを上下する必要がなく作業効率に優れ、標本の高さに制限がなく、大型標本も容易に観察できるといったメリットがあります。

実体顕微鏡

標本が立体的に見える顕微鏡です。時計や電子機器等の微小部品の検査や組立て作業に利用されています。

顕微鏡とは

顕微鏡は、試料を照明し、2つのレンズ(対物レンズと接眼レンズ)で拡大された像を観察するものです。このように、2つのレンズで試料を拡大する顕微鏡を複式顕微鏡と言います。また、オランダのレーウェンフック(1632-1723)の顕微鏡に代表されるような単レンズで標本を拡大する顕微鏡を単式顕微鏡と言います。複式顕微鏡は、16世紀末、オランダのヤンセン親子が2つのレンズを組み合わせることで物が大きく見えることを発見したことにから生まれたと言われています。しかし、当時の複式顕微鏡は、レンズの色収差、球面収差により像が不鮮明になるといった問題があり、単式顕微鏡の方が、像が鮮明で倍率の高い顕微鏡でした。その後、色収差、球面収差の問題は、19世紀になって解決されました。また、それまでの顕微鏡の設計は経験に基づいた方式でしたが、ドイツのエルンスト・アッベ(1840-1905)の登場により、論理的計算に基づいた方式になりました。以後、顕微鏡は観察する標本・研究目的に応じてさまざまな改良が加えられ、現在のような形になりました。

レーウェンフック(Leeuwenhoek)の顕微鏡(レプリカ)