アプリケーションノート

植物における小胞体・細胞質カルシウム動態の同時蛍光イメージング

2026年7月

カルシウムイオン(Ca²⁺)は細胞シグナリングにおいて中心的な役割を担っており、環境刺激や発生シグナルに応答して細胞質や小胞体(ER)のCa²⁺濃度が特異的に変動することが知られている。細胞質におけるCa²⁺ダイナミクスの制御におけるERの役割を解明するためには、生体内(in vivo)で両コンパートメントのCa²⁺動態を同時に解析することが不可欠である。本研究では、ニコンの2種類のイメージングシステムを活用し、組織・器官レベルと細胞レベルという異なる空間スケールにおける細胞質とERの同時Ca²⁺イメージングを実施した。

近年、ER-GCaMP6-210やR-GECO1といった遺伝子コード型蛍光Ca²⁺インジケーター(GECI)を用いることで、ERと細胞質の同時イメージングが可能となっている。本稿では、これらのインジケーターを共発現するシロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)遺伝子組換え系統を用いて、葉への傷害処理や細胞外ATPなどの刺激に対するCa²⁺応答を可視化した事例を紹介する。まず、蛍光実体顕微鏡SMZ18を用いて成体植物の葉の器官レベルのイメージングを行った。次いで、シリコーン浸対物レンズを搭載した共焦点レーザー顕微鏡システムAX Rを用いて、根における細胞レベルの高解像度イメージングを行った。これらの実験を通じて、デュアル蛍光Ca²⁺インジケーター系統が、幅広い発生段階を対象としたERのCa²⁺シグナリング研究に極めて有用であることが示された。

キーワード: 植物生物学、カルシウムイメージング、シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)、共焦点レーザー顕微鏡、実体顕微鏡