アプリケーションノート

定量的ライブセルイメージングによる免疫細胞の分泌活性と遺伝子発現解析

2025年3月

シングルセルRNA-seq(scRNA-seq)は、個々の細胞の種類や状態を分子レベルで区別することで、従来見落とされていた細胞の亜集団や特徴的な分子を発見する主要なアプローチとして広く利用されている。しかし、scRNA-seqは細胞を破壊して解析するため、細胞の動的な変化を捉えることは困難である。一方、一般的なライブセルイメージングで得られる情報は、細胞の形状や運動、予め可視化された数種の分子動態に関するものが主であり、インタクトな細胞の動的な機能をイメージングする手法は限られていた。
白崎善隆先生(東京大学先端科学技術研究センター)ならびに山岸舞先生(株式会社ライブセルダイアグノシス)らのグループは、これらの課題を解決する手法として、全反射蛍光顕微鏡法とFluoroSpot技術を統合した分泌機能ライブセルイメージング法、Live  Cell  Imaging  of  Secretion  Activity(LCI-S)や、特定の状態に達した細胞をLCI-Sで検出し、即時に採取する方法、Time-Dependent  Cell-State  Selection(TDCSS)を実現した。特に、顕微鏡の自動焦点維持装置(Perfect  Focus  System;  PFS)を活用して5日間の長時間撮影を行うことでレアな機能を捉え、従来法では見つけられなかった特徴的な遺伝子プロファイルを明らかにした。本アプリケーションノートでは、LCI-Sおよび TDCSSの利用による、免疫細胞の動的分泌活動および応答初期の遺伝子発現解析についての研究成果をご紹介する
(大阪大学医学系研究科生体防御学教室 茂呂和世先生、慶應義塾大学医学部呼吸器内科 福永興壱先生、東京大学大学院理学系研究科生物科学専攻1分子遺伝学研究室 上村想太郎先生との共同研究)。

キーワード:ライブセルイメージング、動的解析、分泌活性、シングルセルRNAシーケンス、免疫細胞