アプリケーションノート

パネト細胞顆粒の分泌を3次元的に捉える試み:

対物レンズ補正環の操作による光軸方向歪み補正の検証

2026年6月

  共焦点顕微鏡は、生体サンプルの3次元構造を高い空間分解能で可視化することができ、生命科学研究に欠かせないツールとなっている。厚みのある生体サンプルを観察する場合、溶媒と異なる屈折率を持つサンプルの厚さに起因した球面収差が発生するため、光軸方向の歪みを排除して本来の立体構造を画像化するには、正しい知識と工夫が必要となる。本アプリケーションノートでは、厚みのあるオルガノイドの深層部で、歪みを抑えた高精細3次元タイムラプスイメージングを実現する方法を示す。

 対物レンズには、補正環を有するものが存在する。この補正環は、カバーガラスの厚み誤差だけでなく、サンプルの厚みによる球面収差の補正にも適用できる。これにより、特に厚みのあるサンプルの深層部を、球面収差をなるべく排除してよりシャープに観察することが可能となる。補正環の一般的な使用方法は、観察対象物に焦点を合わせつつ補正環を回転させ、対象物が最も明るく高解像度で観察できる位置を探すことである。 

 小腸の陰窩基底部に位置するパネト細胞は、抗菌ペプチドα-defensinを豊富に含む細胞質顆粒を、腸内細菌や食成分の刺激に応答して分泌することで、腸管自然免疫および腸内細菌叢の組成制御に寄与している。このパネト細胞の顆粒分泌の動態を明らかにするためには、3次元的な顆粒の動態を高い時間・空間分解能で追跡する必要がある。そこで、小腸上皮細胞の3次元培養系である小腸オルガノイドの深層部において、空間的にダイナミックに動くパネト細胞の分泌顆粒を観察対象として、顆粒分泌のより高解像度な3次元タイムラプスイメージングを試みた。対物レンズからの光がパネト細胞顆粒に到達するまでに、小腸オルガノイドを包む細胞外基質であるマトリゲルや空間的に幾層にも重なる細胞など、屈折率の異なる媒体を通過するため、補正環による球面収差の補正が必要となる。我々は、計算に基づいて決定した補正環位置を用いることで、光軸方向の歪みが最も少ない画像を得られることを証明した。得られた条件のもと、高感度なNSPARC検出器を用いて高速XYZタイムラプスイメージングを行い、小腸オルガノイド内腔に分泌されるパネト細胞の顆粒の3次元的なダイナミクスを捉えた。

キーワード:補正環、作動距離(WD)、屈折率(RI)、球面収差、共焦点レーザー顕微鏡、3次元画像