再生医療

病気または損傷を受けた組織や器官を交換・修復するための再生医療において、細胞レベルの治療法が発展し、注目を集めています。再生医療では、複数の種類の細胞に分化する能力のある、幹細胞が原則的に使用されます。治療法を確立するために、間葉系幹細胞(MSC)や、胚性幹細胞(ESC)、iPS細胞などの多能性幹細胞が使用されています。

このため、幹細胞の培養や分化の品質管理は、再生医療において非常に重要となります。光学顕微鏡を使用することにより、大規模な「細胞製造」における、培養状態や品質に関する主要な指標を定量的に判定し、評価することができます。具体的な指標には、増殖速度やコロニーの粗密状態、形態的特徴などがあります。

再生医療に関連する製品

倒立顕微鏡ECLIPSE Ts2/Ts2-FLは、シンプルな操作性とコンパクトさに加え、観察しやすさを追求した光学性能を備えており、日々の細胞培養観察にお使いいただけます。LED光源を内蔵しているため、光源のスイッチをONにするだけですぐに観察可能です。透過光モデルのTs2と、蛍光LEDを内蔵した透過/蛍光モデルのTs2-FLをラインナップしています。

●:使用可能 , ⚬:オプション

立顕微鏡ECLIPSE Ts2/Ts2-FL
透過光源 高輝度白色LED
位置制御 手動
カメラの搭載 選択可能(オプション)
培養容器の使用 yes
過酸化水素ガス除染 no
細胞培養工程への適応 no
観察方法 ECLIPSE Ts2
明視野 yes
落射蛍光 TS2-FL
エンボスコントラスト yes
位相差 yes

再生医療について

解析画像
位相差

Cell Analysisモジュールを適用し、位相差画像からiPSCコロニーのマスク画像を作成することで、コロニーの数や面積の測定が可能になります

細胞培養から細胞製造まで

治療に用いる細胞を提供するための細胞培養/細胞製造は、学術や基礎研究の分野で日常的に行われるような細胞培養とは大きく異なります。ヘルスケア産業および製薬業界における製造では、はるかに高いレベルの品質管理と効率性が必要とされ、また厳しい法規制もあります。コストを最小限に抑えながら、必要な要件を満たす高品質の製品を計画通りに製造することが理想的です。

たとえ経験豊富なスタッフであっても、人間のオペレーターによる操作にはばらつきがあるため、正確な細胞製造において大きな障害となります。意思決定に画像解析を利用することにより、これを解決できます。たとえば「播種後に容器を3回振る」などの定性的な方法は、定量的な画像解析を使用してテストを実施し、作業をルール化することができます。

皮膚移植のように、三次元培養幹細胞由来の組織を患者への移植に使用することは、すでに行われています。さらに複雑な細胞での臨床試験も現在進んでいます。最終的な目標は、心臓などの完全に機能する複雑な器官を培養することです。さまざまな種類のオルガノイドなどの三次元培養組織も、創薬の試験に適用されています。詳細については、「創薬」のページをご参照ください。

繊細な細胞への影響を低減

生体組織から採取した初代細胞や、不死化細胞株、幹細胞など、さまざまな細胞がin vitroで培養されます。基礎的な生物学研究でよく使用される、培養された不死化細胞株は、播種密度が適切でないケース、あるいはインキュベーターの外に長時間放置されるケースなどの重大な損傷にも耐えることができます。一方で、幹細胞は環境の変化により影響を受けやすいため、治療の一環として培養する場合は、培養条件を厳しく管理することが重要です。

光毒性も考慮すべき点であり、一般的に位相差観察のような低輝度の照明法が選択されます。蛍光標識は侵襲的であるため、蛍光イメージングは多くの場合光毒性があります。

「細胞×画像ラボ」 – 細胞培養のためのサポート

再生医療分野をサポートすることが、ニコンヘルスケア事業部の目標であり、その達成のため、「細胞×画像ラボ」ウェブサイトを開設しました。このウェブサイトでは、イメージングと解析をどのように活用すれば、細胞培養のプロセスや手順を定量化し、細胞製造の成功率と再現性を向上できるかについてご紹介しています。イメージングや解析は、品質管理だけでなく新しいプロセス開発にも有用です。

「細胞×画像ラボ」ウェブサイトには、細胞培養に関する基本的な情報のほか、細胞培養や細胞製造に関するイメージングや解析の事例などを掲載しています

用語解説

カメラの搭載
ニコンは高速カラーカメラやモノクロカメラなど、さまざまな用途に合わせたカメラを用意しています。
位置制御
オートフォーカスにより自動で焦点を調整します。電動制御によりサンプルの移動や撮影位置の変更を行います。
培養容器の使用
標準的サイズのウェルプレート、ディッシュ、フラスコがステージにセットできます。
細胞培養工程への適応
顕微鏡を、細胞培養加工施設(CPC)で使用できます。
観察方法
細胞培養や細胞製造での標準的な観察方法は位相差観察です。用途に応じて、蛍光観察なども選択できます。
透過光源
透過光観察の光源は、主にLEDまたはハロゲンランプです。LEDは明るくエネルギー効率が高いうえ、ハロゲンランプよりも長寿命です。
過酸化水素ガス除染
過酸化水素ガス除染は、病院や研究施設で広く利用されている標準的な方法です。