痛風検査

痛風および偽痛風の検査は、患部の関節から抽出した滑液の標本を作成し、偏光観察で結晶を識別することで行います。結晶には固有の光学特性があるため、偏光観察により同定できます。

痛風検査に関連する製品

尿酸ナトリウム結晶、鋭敏色偏光観察、CFIプランフルオール40X対物レンズ
日本大学医学部附属病院臨床研究室

痛風検査に関連する製品

検査用顕微鏡Ciシリーズは、ルーチンの痛風検査をはじめ、コラーゲンやアミロイドの観察など、鋭敏色偏光観察や簡易偏光観察に最適な顕微鏡です。鋭敏色偏光装置は偏光板と鋭敏色検板から構成されており、簡単に操作できます。鋭敏色検板を回転させることにより、伸張性の正負を簡単に判定できます。研究用顕微鏡Niシリーズでも同様の機能が使用できます。

偏光顕微鏡Ci-POLは、レターデーションを正確に測定でき、定量的偏光観察が可能な唯一のニコン生物顕微鏡です。この顕微鏡は、生物医学研究において痛風などの結晶をより詳細に分析するのに有用です。

●:使用可能 , ⚬:オプション

検査用顕微鏡ECLIPSE Ci 研究用顕微鏡ECLIPSE Ni-U 偏光顕微鏡ECLIPSE Ci-POL
簡易偏光 yes yes yes
鋭敏色偏光 yes yes yes
定量偏光 no no yes
照明装置 LED・ハロゲン ハロゲン ハロゲン
電動制御 no 一部可能 no

痛風検査について

偏光顕微鏡を使用する痛風検査について

痛風および偽痛風の結晶は複屈折(二重屈折)性を持ち、それぞれの結晶軸の屈折率は分子構造によって異なります。複屈折一軸結晶に入射し、結晶の光学軸とは異なる方向に進む光は、2つの異なる屈折率を通過します。光の約半分は、結晶の光学軸に直交する方向に振動し、「常光線」と呼ばれます。光が結晶の表面に直交して入射すると、常光線は通常通りに屈折し、光路は結晶中を逸れずに進みます。残りの半分の光は、光学軸と平行な平面で振動する「異常光線」であり、その進行方向は屈折で予想される方向から外れます

常光線と異常光線は光路長が異なるため、位相がずれ、同じ振動面で再合成することにより干渉色が現れます。複屈折は、異常光線の屈折率が常光線よりも大きい場合は正号結晶となり、逆の場合は負号結晶となります。

痛風の結晶は一般的には長い針状ですが、偽痛風の結晶は菱形に近くなります。痛風の結晶は伸張性負で、その長軸は遅相軸(この場合は異常光線に相当)となります。遅相軸に平行な平面で振動する光は、屈折率が低いため、遅相軸に垂直な光よりも速く結晶を通過します。一方、偽痛風の結晶は伸張性正で、その長軸は進相軸となります。

痛風検査用の偏光顕微鏡は、光源の後に直線偏光子を0度(東西)の方向に配置しています。痛風結晶の長軸(進相軸)および短軸(遅相軸)が45度の方向になっている場合、入射光のエネルギーはそれぞれの方向に均等に分けられます。2つの光線が結晶を通過する際に、遅相軸を通過する光のほうが遅れるため、位相のズレが生じます。

次に、左上右下斜め45度の方向に配置された2番目の直線偏光フィルター(アナライザー)により、この2つの光が同一の振動面へ戻されます。位相の違いは干渉色として現れます。Michel-Lévyカラーチャートを使用することにより、レターデーションおよびサンプルの厚さと干渉色を関連付けることができます(図1)。

ただし、レターデーションが小さい場合は、白黒の干渉色しか現れません。このため、鋭敏色検板を使用して530 nmのレターデーションを導入します(チャートの赤/マゼンタ色に対応)。鋭敏色検板には、それ自体に直交する進相軸と遅相軸があります。

痛風結晶の長軸(進相軸)が鋭敏色検板の遅相軸と揃っている場合は、530 nmから差し引かれたレターデーションが生じ、黄色がかった干渉色(「一次黄色」)となります。しかし、痛風結晶の短軸(遅相軸)が鋭敏色検板の遅相軸と揃っている場合は、レターデーションは530 nmよりも大きくなり、青色(「2次青色」)となります。これを図2に示します

背景光は影響を受けないため、鋭敏色検板により導入される530nmのレターデーションに対応した赤/マゼンタ色になります。また、鋭敏色検板により、色を読み出しとして使用して伸張性の正負が判断できますが、もしそれがなければ両軸は同じ灰色になります。

理論や顕微鏡など、偏光観察のさらに詳細な情報については、MicroscopyUPolarized Light Microscopy の記事をご参照ください。

用語解説

定量偏光
定量偏光観察には、コンペンセーターのほかに、ベルトランレンズ、十字動装置、回転ステージなどの装置も使用します。この観察方法ではレターデーションを測定できます。
照明装置
偏光顕微鏡用の一般的な光源は、LEDとハロゲンランプです。LEDは明るくエネルギー効率が高いうえ、ハロゲンランプよりも長寿命です。
簡易偏光
簡易偏光装置は、ポラライザーとアナライザーの2つの直線偏光板から構成されます。結晶、アミロイド、コラーゲンなどの複屈折性の有無が観察可能です。
鋭敏色偏光
この観察装置には、伸張性の正負を判別するために鋭敏色検板が追加されています。痛風と偽痛風の判別(定性的複屈折評価)に最も効率的な方法です。
電動制御
代表的な電動アクセサリーは、対物レンズレボルバーと蛍光フィルターキューブターレットです。