アプリケーションノート
多光子共焦点顕微鏡を用いた、マウス脳のミエリンの超解像イメージング
2023年8月
脳研究分野において、多光子共焦点顕微鏡は脳の神秘的な機能や複雑な回路を理解するために不可欠である。脳は私たちの思考、感情、行動を制御する中枢であり、その正確なメカニズムを解明することは、神経疾患の治療や認知機能の向上につながる可能性がある。本アプリケーションノートでは、超解像ディテクターを搭載した高速多光子共焦点レーザー顕微鏡システム AX R MP with NSPARCを用いてマウス脳のミエリンをとらえた、超解像イメージングの例を紹介する。
実験の概要
マウス脳の大脳皮質側をターゲットとして、高速多光子共焦点レーザー顕微鏡システムAX R MPを用いて近赤外光(920 nm)を照射し、HistoBrightで染色したミエリンの超解像画像をNSPARCディテクターで取得した(画像B)。また、それらがミエリンであることを証明するために、近赤外光(1300 nm)を照射して同じ視野のTHG観察を行った(画像C)。 両画像をマージすることにより、それらが完全に一致することがわかる(画像A)。また、神経および軸索をE-YFPで染色して画像を取得した(画像D)。これにより、画像Dの軸索の周囲を、画像Bのミエリンが「鞘」状に取り巻いていることが確認できた。
撮影条件
スキャンモード:レゾナントスキャナー
解像度:1024 x 1024画素
ズーム:5x
対物レンズ:CFI アポクロマート LWD Lambda S 40XC WI (NA 1.15)
サンプルご提供:愛媛大学大学院医学系研究科・分子病態医学講座 川上 良介先生
結果
2光子や3光子励起では解像度が低下し微細な構造をイメージングすることは困難であるが、NSPARCと特別な蛍光色素を適用することで、細胞体から伸びる軸索に巻きつくミエリンの初端を蛍光とTHGで可視化することに成功した。
まとめ
超解像ディテクターNSPARCは、25個のアレイディテクターにより、多光子共焦点システムの機能を損なうことなく、さらなる高解像度を高S/N比で実現します。