アプリケーションノート

形態学的・分類学的研究および標本のデジタル化に活用される研究用システム実体顕微鏡SMZ25

2023年11月

~百聞は一見に如かず~

分類学の父と呼ばれるカール・リンネの時代から今日までに、約 150 万の新種が記述されている。しかし、これは世界の種の多様性のほんの一部に過ぎないため、分類学者は種の発見のペースを加速し、従来の記述方式をさらに改善する方法を常に模索している。

分類学的な記述は、他のどんな分野よりも図解に依存している。種の説明には、研究対象の分類群の形態に関する情報を伝えるために、分類学の初期の段階からほぼ常に視覚的表現が行われている。従って、分類学において種の記述方法をさらに向上できるデジタルイメージングの重要性は、長きにわたって広く認識されている。

キーワード:形態学、分類学、科学的イラストレーション、生物学的イラストレーション、研究用システム実体顕微鏡SMZ25

Attemsostreptus reflexus のオスのホロタイプの頭部および最前部の体環

撮影条件:研究用システム実体顕微鏡SMZ25、対物レンズ:0.5X、スケールバー:1 mm

画像ご提供:Nesrine Akkari

参考文献:Revision of the genus AttemsostreptusVerhoeff, 1941 with description of a new species from Tanzania and notes on the tribe Trachystreptini Cook, 1896 (Spirostreptida, Diplopoda)

Akkari N. & Enghoff H.European Journal of Taxonomy 575 (2019) : 1–12.

https://doi.org/10.5852/ejt.2019.575

分類学的研究のための科学的イラストレーション

近年の分類学的研究では、他の図解法を補完するために、顕微鏡写真を使用することが増えている。

異なる焦点面の情報を、 1回の撮影ですべて表示することはほぼ不可能であるため、複雑な 3 次元構造の情報を伝えることは非常に困難な場合がある。焦点スタック(EDF)イメージングは、この問題を回避するための有用な手法であり、​​分類群の説明や科学雑誌の全体的な品質を大幅に向上させることができる。

ウィーン自然史博物館の多足類コレクションの学芸員であり、多足類分類学者であるNesrine Akkari博士は、標準的な方法や革新的なイメージング技術、分子データなどを組み合わせて、多足類の体系を研究するさまざまなアプローチを統合することに注力している。博士は、ヤスデとムカデのさまざまな群の分類学、形態学、系統発生、進化について定期的に出版している。また、現在までに、多くの国際的な研究者と協力して、査読済み論文を60件以上発表し、60 にも及ぶ新しい分類群 (種、属) について記述している。

研究事例

研究用システム実体顕微鏡SMZ25は、ウィーン自然史博物館において、動物グループ I の研究における重要な形態学的特徴を観察および画像取得するために使用されている。顕微鏡カラーデジタルカメラDS-Ri2を搭載しており、研究対象種の大まかな特徴から微細な構造に至るまで、外観の形態学的特徴を観察および撮影できる高性能を有する。同博物館の多足類コレクションの学芸員であるNesrine Akkari博士の分類学の研究では、科学雑誌に掲載するための新しい分類群の記述を準備することだけでなく、種の同定を可能にする特定の構造を正確に測定して図示することが最も重要である。画像統合ソフトウェアNIS-Elementsを使用することで、モニター上でカウントや注釈、測定が行えるため、エラーの発生率や目への負担を大幅に削減できる。また、焦点スタック機能により研究対象の立体的な構造の詳細を捉えることができるほか、対物レンズの自動キャリブレーション機能により構造のサイズの測定および推定の際の精度を高めることができる。さらに、DS-Ri2カメラを用いることで、正確でリアルな色の画像を取得することも可能である。

また、 博士は、管理するコレクション内のタイプ標本と参照標本のデジタル画像の取得にも、SMZ25実体顕微鏡を活用している。取得した画像は現在、実物の標本の代用として使用されている。また、他の国際的な専門家にオンデマンドで画像を送信することにより遠隔での観察や調査が可能となり、壊れやすく希少な博物館所蔵の標本の紛失や損傷のリスクの低減に繋がっている。

博士が特に高く評価しているSMZ25およびDS-Ri2の機能は以下の通りである。

  • 高解像度の多焦点面画像が取得できるため、査読済み科学雑誌における新種および他の種の形態学的記述の手法を向上できること
  • 倍率範囲が幅広いため、全体像から詳細まで、一連の構造を観察および画像取得できること
  • 色の精度が高いため、リアルな最終画像を伝えられること
  • 充分な長さの作動距離があるため、快適に操作できること

進行中の科学プロジェクトのためにタイプコレクションのヤスデ標本を観察し画像取得する、ウィーン自然史博物館・多足類コレクションの学芸員であり多足類分類学者のNesrine Akkari博士

画像ご提供: Christina Rittmannsperger(ウィーン自然史博物館)

ご協力

Nesrine Akkari博士
ウィーン自然史博物館・多足類コレクション学芸

Natural History Museum Vienna
3rd Zoological Department
Burgring 7, 1010 Vienna, Austria

製品情報

研究用システム実体顕微鏡SMZ25

優れた明るさと高解像度を両立した実体顕微鏡。 世界最高のズーム比により、マクロからミクロまでシームレスな観察を可能にします。