アプリケーションノート

広視野の共焦点レーザー顕微鏡システムにより、マクロからミクロまでを捉えた骨格筋線維形成メカニズム

2022年4月

骨格筋の形成は、間葉系幹細胞におけるマスター転写因子(Pax7、MyoD、Myogenin)の発現による筋芽細胞への分化に始まる。その後、MyomakerやMyomixer等の分子が筋芽細胞を融合(多核化)させ、骨格筋線維へと成熟化させる。骨格筋線維の形成にあたり、単核の筋芽細胞はアクチン、チューブリン等からなる細胞骨格を再編成し、縦に伸びた形態を示す。この時、縦長の細胞は高密度になると隣同士の細胞が向きを揃え、局所的な秩序相を形成する。この細胞集団を巨視的に見ると特徴的な渦状パターンを示し、その後の骨格筋線維に引き継がれる。一方、細胞集団がうまく向きを揃えられていない箇所は、秩序相に対してトポロジカル欠陥と呼ばれ、単核の丸い細胞の集積が観察される。このような筋芽細胞集団の渦状パターン形成は、その後の多核化と骨格筋線維への成熟化に重要である可能性がある。
北海道大学 大学院医学研究院 生化学分野 分子生物学教室の麓佳月氏、及川司講師らは、筋芽細胞集団が渦状パターンを形成するための必要条件となる分子機構の解明を目指し、転写因子や膜融合分子、細胞骨格分子等の微視的分子動態が、いかにして細胞集団、あるいは組織レベルの巨視的表現系に結びつくかという問いに答えるべく挑んでいる。
本アプリケーションノートでは、共焦点レーザー顕微鏡システムが捉えた、細胞内の関連分子の挙動および細胞集団の巨視的パターンについて紹介する。