アプリケーションノート

共焦点レーザー顕微鏡システムAXによる 同一組織切片のHE染色像と蛍光免疫染色像の取
-近赤外蛍光色素を用いた自家蛍光フリー免疫染色の実現-
2025年3月
ヘマトキシリン・エオシン染色(HE染色)は、細胞や組織の構成要素を染色する病理診断法に必須の手法である。一方、悪性度診断、腫瘍分類などの詳細診断をバイオマーカーの検出により実施するために、連続切片を用いた免疫染色が行われている[1]。連続切片を用いる場合、切片間の構造差が局在解析結果の解釈に影響を与える可能性があるため、理想的には同一切片上でHE染色と蛍光免疫染色を実施することが望ましい。しかしながら、可視光蛍光波長の蛍光色素を検出に用いる蛍光免疫染色とHE染色を同時に行うと、HE染色に起因する可視光域の自家蛍光(波長550 - 650 nm)が背景光となり、バイオマーカーの分布が正しく観察できないことが報告されている[2]。上記の問題を解決するためには、HE染色に起因する自家蛍光のスペクトルから離れた波長域の蛍光色素を用いて蛍光免疫染色を行う必要がある。本稿では、ヒト肺癌組織に対してHE染色と近赤外蛍光色素を用いた蛍光免疫染色を行い、同一の切片について明視野観察によるHE染色画像と、共焦点レーザー顕微鏡システムAXを用いた蛍光観察による免疫染色画像を取得し、比較した例を紹介する。
キーワード:組織切片、HE染色、蛍光免疫染色、共焦点イメージング