アプリケーションノート
細胞のサイズと形態解析が全自動スマートイメージングシステムECLIPSE Jiでより簡単に、より快適に
2023年9月
ECLIPSE Ji は、画像統合ソフトウェアNIS-Elements SEと組み合わせて使用することで、画像取得から解析、グラフ作成まで自動で実行できるSmart Experimentを搭載しています。事前に学習させたArtificial Intelligence (AI) と定義済みのイメージングプロセスが画像取得と解析条件の設定を自動で最適化するため、簡単な操作で可視化されたデータやEC50の情報が得られます。細胞のサイズと形態の解析は、化合物や分子標的薬の薬理作用、細胞培養用の培地や足場材の開発、生命現象の解明など、さまざまな細胞生物学の研究で利用されている汎用的なアッセイです。本アプリケーションノートでは、Smart ExperimentのSize & Morphological analysisモジュールを使用して、カンプトテシンの用量依存的な細胞面積の増加を可視化し、EC50を算出して薬物の効果を定量化する例を紹介します。
キーワード：細胞のサイズ解析、形態解析、自動設定、EC50、用量反応曲線
(1) 96ウェルプレートにHeLa細胞を播種し、24時間培養。(2) カンプトテシンを10段階の濃度で24時間、細胞を処理。(3) 核と細胞膜を染色し、細胞を固定。(4) ウェルプレートをECLIPSE Jiに設置し、Size & Morphological analysisアイコンを選択して自動で画像取得と解析を実施した。
| 検出領域 | 蛍光ラベル | Ex/Em (nm) |
|---|---|---|
| 全ての細胞の核 | Hoechst 33342 | 352/461 |
| 細胞領域 | CellMaskTM Deep Red | 649/666 |
| 倍率 | 視野（FOV) | |
| 10X | 1.76 x 1.76 mm |
|
図1. 二値化とセグメンテーション
上段：蛍光画像、 Hoechst 33342（青：全ての細胞の核） 、 CellMask™ Deep Red（赤：細胞領域）、マージ画像（右）。
下段：マスク画像（青：核マスク、赤：細胞領域マスク）、マージしたマスク（右）
図2. コントロールおよびカンプトテシン1000nMで24時間処理したHeLa細胞のマスク画像と解析結果
上段：コントロール、下段：カンプトテシン1000nM、左：蛍光画像（スケールバー:100μm）、中央：拡大画像、マスクの輪郭を重ね合わせた明視野画像 （青：核マスク、赤：細胞領域マスク）、スケールバー：50μm）、右：解析結果の散布図 (X軸：核の面積、Y軸：細胞の面積）
カンプトテシン1000nMを添加したウェルは、細胞の面積が増加した。
図3. 細胞数と細胞面積（平均）の解析結果、カンプトテシンの用量反応曲線
(A) 棒グラフ（青：細胞数、オレンジ：1細胞あたりの細胞面積（平均）、薬物濃度が12.3nM以上のウェル（7-11列）で1細胞あたりの細胞面積（オレンジ）が顕著に増加した。また、コントロール (2列）に比べて細胞数（青）が少なく、細胞増殖が抑制された。(B) Violinplot（1細胞あたりの細胞面積（平均））、プレートマップビュー表示により、各ウェルでの薬物反応を直感的に確認できます。数値データはヒートマップ表示やデータテーブルで確認できます。(C) カンプトテシンの用量依存的な細胞面積の増加を示した用量反応曲線（X軸：薬物濃度（対数）、Y軸：1細胞あたりの平均面積）、EC50= 8.716nM、Z’-factor = 0.64。
Drug info
カンプトテシンの薬効薬理、作用機序：
カンプトテシンは、DNAトポイソメラーゼIの阻害剤。DNAトポイソメラーゼIは、DNAの複製に関与している酵素。カンプトテシンは、DNAの複製やチューブリン脱重合などの細胞分裂に関わる機能を阻害するため、細胞の増殖を抑制し、抗腫瘍活性を持っています。細胞分裂が停止し、細胞のサイズが増加する現象が観察されます。
Smart Experimentで実験を自動化し、プロセス数を削減
従来の手法では画像取得と解析条件の最適化には多くの設定が必要でした。Smart Experimentは、画像取得から解析、グラフ作成のプロセスを自動化して、手動による設定や最適化の工程数を大幅に削減します。
人による高度な判断が必要なオートフォーカスの設定にはAIが最適な焦点面を見つけるCellFinder.aiを搭載。人による設定は実験アイコンを選択し、サンプル（薬物）情報を入力するだけのシンプルで簡単な操作です。初めてのユーザーでも操作方法を短時間で習得できる使いやすいソフトウェアです。
まとめ
- カンプトテシンの用量依存的な細胞面積の増加と細胞増殖の抑制が確認されました。
- 細胞のサイズを計測し、 自動で用量反応曲線を作成し、EC50 を算出できました。
- Smart Experimentは、画像の取得から解析、グラフ表示まで全自動で実施できます。
- CellFinder.aiが最適な焦点面を見つけるため、面倒なオートフォーカスの設定は必要ありません。
- ウェルプレートをJiに設置して、Size & Morphological analysisのアイコンを選択し、サンプルの情報を入力するシンプルな操作です。今回の実験条件では、撮影開始からグラフ表示まで17分で実施できました。
- 面倒な設定作業は、AIに任せて研究者はより創造的な研究活動に専念できます。
サンプル作成のプロトコル
- HeLa細胞を96ウェルプレートに4.5x10e3 cells/wellの密度で播種し、 37℃、5% CO2インキュベーター内で24時間培養する。
- カンプトテシンを0、0.152、0.457、1.41、4.11、12.3、37、111、 333、 1000 nMの濃度に培地で希釈し、各濃度の被験物質溶液を各6ウェルに加える。細胞をカンプトテシンで24時間、37℃、5% CO2インキュベーター内で処理する。
- 5 μg/ml CellMaskTM Deep Red および 2 μg/ml Hoechst 33342 を含む培地に交換し、 37℃、5% CO2インキュベーター内で1時間染色する。
- 細胞を 4% PFA で室温条件下で 10 分間、固定する。
- 細胞をPBSで2回洗浄する。
細胞培養 |
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|---|---|
細胞 |
HeLa (RIKEN RCB0007) |
増殖培地 |
MEM + 10%FBS + 1%Pc/Sm |
培養容器 |
EZVIEW® Culture Plate B (Glass Bottom Plate) Microplate 96 well (AGC techno glass (IWAKI), 5866-096) |
被験物質 |
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|---|---|
化合物 |
Camptothecin |
試験濃度 |
Negative control: 0 nM
Positive control: 333 nM To make a dose-response curve, design required concentration points as follows: Ex: (0) 0 nM, (1) 0.152 nM, (2) 0.457 nM, (3) 1.41 nM, (4) 4.11 nM, (5) 12.3 nM, (6) 37 nM, (7) 111 nM, (8) 333 nM, (9) 1000 nM |
プレートマップの例 |
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試薬 |
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|---|---|---|
製品名 |
製品番号 |
メーカー名 |
| (S)-(+)-Camptothecin, >=90% (HPLC), powder | C9911 | Sigma-Aldrich |
| -Cellstain®- Hoechst 33342 solution | H342 | Dojindo Laboratories |
| CellMaskTM Deep Red Plasma Membrane Stain | C10046 | Thermo Fisher Scientific,
InvitrogenTM |
| MEM (Minimum Essential Medium) | 11095080 | Thermo Fisher Scientific |
| Fetal bovine serum (FBS) | 10437028 | Thermo Fisher Scientific |
| Penicillin-Streptomycin (Pc/Sm) (10,000 U/ml) | 15140122 | Thermo Fisher Scientific |
| 16%-Paraformaldehyde Aqueous Solution (16% PFA)
*Dilute by 4% with PBS before use |
11850-14 | Nacalai Tesque |
| Dimethyl sulfoxide (DMSO) | 276855 | Sigma-Aldrich |
□ 対応容器＊
- 24, 48, 96 ウェルプレート
＊ガラスおよびポリスチレン底のウェルプレートに対応しています。画質を優先する場合は、ガラス底のウェルプレートを使用してください。
参考文献
Futamura, Y, et al., Morphobase, an Encyclopedic Cell Morphology Database, and Its Use for Drug Target Identification. Chemistry & Biology 19 1620-1630 (2012)
製品情報
Smart Imaging System ECLIPSE Ji
ECLIPSE Jiは、AI-Driven全自動イメージングシステムです。NIS-Elements SEと組み合わせて使用することで、画像取得・解析・グラフ作成をシームレスに自動で実行できます。
人による高度な判断が必要なオートフォーカスの設定にはAIが最適な焦点面を見つけるCellFinder.aiを搭載。画像取得や解析のプロセスに多くの学習済みAIを実装。これにより、設定や最適化の工程数が大幅に削減され、誰もが簡単に結果を得ることができます。
画像統合ソフトウェアNIS-Elements SE
SmartExperiment Basic Set
Size & Morphological analysis
- 画像の取得から解析、グラフ表示まで全自動で実施
- 細胞数の計測、核や細胞の形態解析。
- ワンクリックでレポートを作成し、画像、解析結果、用量反応曲線、 EC50 /IC50の算出結果をPDFで出力できます。
- 細胞イメージングと解析をより簡単に、より快適に