アプリケーションノート

近位尿細管の生体模倣システムの3Dイメージング
2025年3月
生体模倣システム (Microphysiological System: MPS) は生体内を模した環境を構築した3D培養システムである。医薬品の前臨床試験において、ヒトの生体内環境を考慮した評価を可能にするツールとして注目されており、倫理的な観点から動物実験を代替する手段としても期待されている。MPSでは、マイクロ流路や多孔膜などを用いて、3D空間に細胞を取り巻く環境を忠実に再現する。これにより、従来の2D培養よりも生体組織に近い状態での研究が可能となる。すでに再生医療、医薬品開発、毒性評価、疾患研究などに利用されており、新たなin vitro 評価法として期待されている。
本アプリケーションノートでは、コラーゲンゲル流路を用いて構築された近位尿細管モデルにおいて、ヒト腎近位尿細管細胞上の一次繊毛 (primary cilia) を、共焦点レーザー顕微鏡システムAX Rにより観察した例を紹介する。 AX Rは従来の共焦点顕微鏡よりも広範囲に、高解像度な3D構造を捉えられるため、一次繊毛のような直径約200 nm程度の小さな構造物を、組織全体で鮮明に観察することが可能である。
キーワード: 生体模倣システム (MPS)、Organ-on-a-chip、3D培養、共焦点顕微鏡、近位尿細管、一次繊毛、再生医療、医薬品開発、毒性評価、疾患研究