顕微鏡でしか見えない、世界最小の顕微鏡
リンドン氏は、肉眼では見えないほど小さな芸術作品を作ることで世界的に知られています。今回の作品は、ニコン初の顕微鏡「JOICO」のミニチュア。その緻密さと技術力、そして100年にわたる科学の発展を支えてきた道具への敬意が込められています。
「世界最小の顕微鏡の彫刻を制作できたことを誇りに思います。この作品は、1925年に誕生し、今年100周年を迎えるニコンの記念すべき最初の顕微鏡、JOICOに捧げるものです」
史上最小の手作り彫刻など、驚異の12個ものギネス記録を持つリンドン氏。彼がニコンSMZ25を使ってJOICO顕微鏡を再現したことには、深い意味があります。それは、100年前のJOICOと現代のSMZ25、二つの時代をつなぐ作品となっています。
1925年:すべてはここから始まった
JOICO顕微鏡は、ニコンが初めて世に送り出した顕微鏡。科学機器メーカーとしてのニコンの第一歩を刻んだ製品です。頑丈な作り、信頼性の高い光学系、そして使いやすさ。シンプルな構造と色のにじみを抑えたレンズで、科学者たちに「見えない世界」への扉を開き、生物学、医学、材料科学など、さまざまな分野の研究を支えました。
JOICOからSMZ25:顕微鏡技術の進化
リンドン氏が制作に使ったニコンSMZ25は、顕微鏡技術の大きな進化を象徴する製品です。実体顕微鏡として世界トップクラスのズーム性能を持ち、縫い針の穴よりも小さいものでも、自然な立体感で細部まで見ることができます。
「視界のクリアさ、広い焦点範囲、そして実用的な作業距離。これらすべてが革新的で、自分の作品をこれまでにないほど鮮明に見ることができるようになりました」
さらに、人間工学に基づいた設計も、リンドン氏のような超精密作業には欠かせない要素。
「足元のペダルで電動ズームやピント調整ができるのが本当に助かります。手で顕微鏡に触れることなく操作できるので、作品を傷つけるリスクが劇的に減りました」
こうした機能は、現代の顕微鏡がいかに「使う人」のことを考えて設計されているかを物語っています。
"不可能"に挑む6年間の軌跡
ミニチュアJOICO顕微鏡の制作は、決して簡単な挑戦ではありませんでした。リンドン氏のこうした作品は、6年以上かけて培ってきた技術の結晶です。制作にあたって、彫刻が小さすぎて既存の工具が使えないため、顕微鏡で作業するための工具を自分で一から作る必要がありました。また、昼間の交通による振動を避けるため、夜間に6〜10時間作業を行います。瞑想状態に入りながら、心臓の鼓動と鼓動の間のわずかな静止時にだけ手を動かす。SMZ25のような高性能顕微鏡の下で、特殊な工具を駆使し、調整ノブや鏡筒など、一つひとつの部品を丹念に作り上げていきます。完成したモデルは、ピンの頭に載るほど小さいのに、オリジナルを知る人なら一目でわかるほど精巧。まさに「不可能を可能にした」作品です。
科学と芸術が出会う場所
リンドン氏のミニチュア作品は、ニコンの顕微鏡が築いてきた歴史への賛辞であると同時に、科学的探求に内在する芸術性を思い起こさせるものです。SMZ25を使ってJOICO顕微鏡を再現することで、リンドン氏は過去と現在をつなぎ、顕微鏡技術がどれほど進化したか、そしてこれからどんな可能性が広がっているのかを私たちに見せてくれました。
リンドン氏の作品は見る人を魅了し続けると同時に、私たちに問いかけます。1925年のJOICO顕微鏡から現代のSMZ25まで、“発見”を支える道具たちがどれほど素晴らしいか。そして、それらが明らかにする世界——見えるものも、見えないものも——がいかに驚きに満ちているかを。
*1 2020年から2025年にかけて、ギネス世界記録認定
注:
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掲載内容は取材当時のものです。