アプリケーションノート

構造化照明が可能にする、診療用腎生検光学顕微鏡標本を再利用した腎足突起・ミトコンドリア病変の定量分析

2022年1月

腎糸球体上皮細胞の足突起癒合や尿細管上皮細胞のミトコンドリア障害(形態的には断片化や膨化)は、腎臓病の発症・進展に関与する。これらの微細構造変化を可視化するためには、通常は電子顕微鏡が必要であるが、腎生検組織の大部分は光学顕微鏡標本として処理されており、小さな電子顕微鏡用サンプルを観察しただけでは重要な病変を見落とす可能性があった。このため、光学顕微鏡標本を用いて採取組織全体にわたって前述の病変を評価する方法の確立が望まれていた。
病理組織染色用色素は明視野における可視化に最適化されているが、これらの色素には各色素特有の蛍光特性がある。大阪大学大学院 医学系研究科 腎臓内科学の松本あゆみ先生、松井功先生、猪阪善隆先生らは、病理組織染色用色素が有する蛍光特性に着目し、追加の蛍光染色を行うことなく、腎臓病診断用に作製された病理プレパラートをそのまま構造化照明超解像顕微鏡N-SIM Sで観察し、足突起およびミトコンドリアの病変を定量分析する方法を確立した。本アプリケーションノートでは、その報告におけるN-SIM Sの活用事例を紹介する。