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2025年9月
腸管は体内において最も重要な吸収器官の一つであり、その内腔表面は陰窩(クリプト)と絨毛から構成される特徴的な三次元構造を有している。クリプト基底部に位置する腸管上皮幹細胞は、吸収上皮細胞、杯細胞、パネート細胞へと分化し、腸管の多様な生理機能を担っている。特に、杯細胞が分泌するムチンは粘液層を形成し、腸粘膜表面の保護バリアとして腸管の恒常性維持や腸内細菌との共生において重要な役割を果たしている。
名古屋市立大学の松永教授らが開発したセルカルチャーインサート上での気液界面培養法は、従来困難であった生体内構造の再現を可能にし、より生体の腸管に近いin vitroモデルとして注目されている(Ogawa et al., 2025)。本アプリケーションノートでは、AX/AXR共焦点レーザー顕微鏡システムを用いてこのin vitro腸管モデルで形成された三次元的な絨毛突起構造およびムチンの局在を可視化した事例を紹介する。さらに、NSPARCアレイディテクターの超解像機能を活用することで、特別なサンプル前処理を施すことなく、絨毛表面に密集した微絨毛の構造を立体的に捉えることができた結果についても詳述する。このような回折限界を超えた3Dイメージングは、生物学的に複雑な多細胞性in vitroモデルに対するより深い知見をもたらし、創薬や再生医療、基礎研究に貢献する。
キーワード:iPS、3D培養、 in vitro、セルカルチャーインサート、創薬、再生医療、共焦点顕微鏡、NSPARC、3Dイメージング