アプリケーションノート

ニコン多光子共焦点レーザー顕微鏡システムを用いた 生体深部観察による植物受精過程のライブセルイメージング

2025年4月

花の中で花粉管(オス)が胚珠(メス)へと導かれるしくみは花粉管誘引と呼ばれる化学屈性の一種であるが、花粉管は1本だけ誘引され、2本目以降は拒否される。この精担否は植物が確実に受精し、より多くの種子を作るために進化させたしくみと考えられるが、その分子機構の全貌は明らかとなっていない。その原因として、花の内部を生きたまま観察するのが困難であったためである。

名古屋大学トランスフォーマティブ生命分子研究所の水多陽子先生らは、深部到達性が高く生体への侵襲性が低い二光子励起頭微鏡を用いて、シロイヌナズナのめしべ内部を観察する方法を確立した。植物の生体深部観察に適した長波長励起(980nm~)と二光子励起に適した蛍光タンパク質を用いることで、世界で初めて花粉管誘引や拒否の瞬間を生体内で捉えることに成功した。画像解析の結果、雌雄配体と母体による花粉管挙動の時空間的な制と、多段階の多精拒否のメカニズムが明らかとなった。本研究により、被子植物が花の中で花粉管動態を精密に制し、効率よく子孫を残すしくみの一端が明らかとなった。

キーワード:二光子励起、生体深部観察、植物受精